「俺今日アレン・ウォーカーと目ェ合っちゃった。にこって笑いかけてくれたさ!」

神々しいほどの光と花を背後にばら撒きながらラビは言う。

「私、今日話したわよ」

リナリーの一言で花が散った。

「あたしは普通に名前も覚えてもらったけどね」

の一言で光が消えた。

「大体さー、ユウに至っては案内人だよ?これからアレンくんはユウと四六時中一緒なわけです。まー、学年違うから授業中は違うけどね」

は市松模様のクッキーを二枚同時に指で挟むと口の中へ投げ入れた。
リナリーの入れた紅茶とその味が大分マッチするようになってきて、はにこりと微笑んだ。

「リナリー、うまくなったね紅茶淹れるの」
「ラビとが教えてくれたからね」

ラビもどう?机に突っ伏して沈み込んでいる彼に向かってカップを差し出す。顔だけわずかにラビはあげ、しばらくじっとリナリーを見つめたあとにそれを受け取った。
ゆっくりと口元へ運んでいく。

「リナリー、ほんと上手くなったなー昔中国のお茶と同じ淹れ方で淹れられた時はどうしようかと思ったけどな・・・」
「あれはぶったまげたね・・・・」
たちがこだわりすぎなのよ!ほとんどの人がお茶なんて同じ淹れ方だと思ってるわよ。クラスの女の子たちは容器が違うだけで日本茶と紅茶を同じやり方で淹れてたもの」

リナリーを含め彼女たち3人は、いつも通り学校から帰ってきたその直後にお茶会を催していた。今日の当番はどうやらリナリーだったらしい。
都内某所のお気に入りの銘菓店からクッキーを購入し、ラビがどこかからか輸入してきたアップルティーを淹れたようだ。
今回は少し時間に余裕があったためにテーブルクロスやティーセットにも気を使ったのか、全体的に淡いブルーに統一されていた。梅雨の季節にぴったりの色合いだ。

「あ、そういえばアレンくんはイギリス出身だよね。もっと本格的な淹れ方教えてもらえるんじゃない?」

ラビお気に入りのレーズンクッキーをほおばりながらは言う。
隣で仕返しの意を込めてお気に入りのハーブクッキーを3枚同時に掴みながらラビは、そうさねやったじゃんこれでのまがいもんから卒業だな、と鼻で笑うように言った。

あ、ちょ!何すんのよそれ私のお気になのに!あ!?先に食ったのはどっちだよ!

繰り広げられる言い合いに、リナリーは少しも関心を示さずに優雅に紅茶を啜っている。

「そう言えば、なんで神田が案内人なの?」

戦いが終盤に差し掛かった所でリナリーは思い出したようにそう言った。
ぴたり、2人の動きが同時に止まる。

「俺もそれ気になってたんさ。なんでユウが案内人?」

それまで言い争ってたことが嘘かのようにラビはにそう訪ねた。
彼女も彼女でやる気が削がれたのかそれとももともと対して意味などなかったのか、あっさりとそれに答えていく。

「だって一番英語ができるんだもん」

暑いーと言いながら少しサビついた窓を開放する。
まだ涼しいと言うことのできる6月の風が部屋に舞い込んできた。

「それならもできるじゃない。こう言うのもなんだけど、神田が案内人に向いてるとは思えないわ」

優しいけど無愛想だし、リナリーは遠慮がちにそう言う。
前半間違ってませんかと言うラビの主張はの蹴りによってないものとされた。

「んー、でもほら、案内人て信頼できる人じゃなきゃいけなかったし」
「なるほどなー。でもユウもも1年生にして案内人に生徒会長だったんだろ?それ、なんで?」
「知らないよ。この学校に学年なんてあってないようなもんだしね。全部推薦なんだから、あたしのせいじゃない」

さらりと興味なさそうには言う。
自分のすごさがどうやらわかっていないらしい。
ラビやリナリーと言った留学生と共にいることが多いため、多少は普通の日本人高校生と思考回路が違うのだろうか。
ラビとリナリーがおかしいわけではないだろうけれど。

「あ、ラビ。そういやユウが今日話があるから夜部屋にいろとか行ってたよ」
「話?なんだろ、俺なんかしたっけか?」
「たぶん留学関係だと思う。今日一通りアレンくんに説明するって言ってたから」

アレン・ウォーカーに会えるなら張り切るんだけどなぁ、冗談めかしてそう言ったラビに、リナリーがくすくすと笑った。何がおかしいんさ、と聞けば、ラビが他人に興味示すなんて珍しいなって思っただけよ、とそう言った。も意味ありげに肩をすくめる。返事に困ったらしいラビは、ごちそうさま、とリナリーに言うと部屋に戻っていってしまった。


 
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07年07月22日


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日常編3