見つけた。









薇が愛した花嫁










「ふぅん、じゃぁアレンは最近入団したばっかなんだ?」

いつの間にか2人での昼食が日課になってしまってから早1週間。
アレンとは、並んでジェリー特製のオムライスをほおばっていた。量の違いについてはあえて触れない。

「はい、そうなんです。だから任務はまだ一回しか行った事ないんですよ。」
「リー姉と?」
「いえ、リナリーではないです。名前を出すのも不愉快などっかの馬鹿と行ってきました。」
「・・・・・・・・・そう。」

はその相手の名前が知りたくなったが、アレンの機嫌が明らかに急降下したため、それ以上質問はできないなと諦めた。

「アレン、ご飯食べちゃっていいよ。あたしは待ってるから。」

例によって先に皿の上が綺麗に片付いたのはアレンの10分の1も食べていないの方で。始めの頃は少し遠慮していたアレンも、今ではが何も食べずにそこにいても気ならなくなっていた。
それじゃぁさっさと食べちゃいますね、と食事に専念する。



初めてアレンとが出会ってから、は相当アレンに懐いたらしく、毎日暇さえあればアレンの元へ向かっていた。アレンもアレンで、教団に入ってまだ日は浅く、任務はそうそう回ってこない。鍛錬をはもちろん毎日続けているものの、空き時間というものができてしまう。科学班の人たちと彼は多少なりとも仲がいいのは確かだが、あの破滅的な忙しさに年がら年中追われている彼らの休憩時間にお邪魔することはなんだかとても気が引けて、もちろんそこへ顔を出すなんてことができるわけもない。かといって知り合いのエクソシストと探索部隊はリナリーと神田とトマくらいであり、だから話相手ができたことは嬉しく思っていた。
養父の元で旅芸人をやっていたときのことを思い出す。観客の中にいた自分と同じくらいの子供やそれよりもさらに幼い子供たちと過ごす、ほんのひととき。にその話をしてみたら、とても興味津々に聞いていた。

アレン、アレン、と後をくっついて回る小さな探索部隊の少女、

妹という存在がもし自分にいたならば、それはこんな感じなのかなとアレンは考えていた。
アレンは彼女の素性も生い立ちも何も知らなかったが、周りからの噂で一つだけ知ったことがある。



―生まれた時からはここにいる。―



聞いてはいけないような気がして、どうしても本人に聞くことはできない。
しかしどのみち、アレンはこれ以上について深追いするつもりはなかったし、させるつもりもなかった。
お互いさまだ。
おそらくは、だってアレンについての噂はいくらだって聞いただろう。







白髪の新人エクソシスト。


神さまに愛された子ども。


悪魔に呪われた少年。







「ごちそうさまでした。」

ぱん、と両手を胸の前で合わせてアレンは言う。
それを見てはきょとんとした表情で首をかしげた。

「デザートは?」
「あ!すみません!ちょっと待っててください今すぐ持ってきてすぐに食べます!は何か食べたいものありますか?」
「バニラアイス頼んでもいい?アレン持てる?」
「平気ですよ。じゃぁ取ってきますね!」

ぱたぱたと走っていくアレンの背中をはまたにこにこと見つめていた。





























「――――と、まぁ、最近こんな感じなんだけど、どう思う?」

そんな2人の様子を懲りもせず初日からずっと見ている少女が1人。
始めの2〜3日は1人でぼんやりと見ていた程度だった彼女の視線も、最近は何故だかただならぬものを含んでいた。
今日は、さらにもう1人。

「どう思う?とか言われても、俺、アレン・ウォーカー知らないし、とも別にそんなに仲良くないし?」

赤毛の少年エクソシスト兼ブックマンJr.のラビは呆れた声でそう言うしかなかった。
そもそも、何故自分がこんなところに連れてこられたのかわからない。

リナリーが突然部屋を訪ねてきてから早1週間。結局あの時彼女は、本を読んでいたラビの背に自分の背中を預けて2〜3時間黙ってそこにいただけだったため、ラビは本当に何がなんだかわからなかった。
そのほんの3〜4日前にアレン・ウォーカーという新たに入ってきた少年エクソシストの話をとても嬉しそうに顔を綻ばせながら話していたというのに、今のこのオーラはなんなのだろうか。
ラビは自分がブックマンと共に科学班の仕事を手伝っていたときに何かあったのではないかと一瞬考えたが、その時はリナリーも共にあの部屋をせわしなく駆け回っていた記憶があるのでそれはない。
とすればその手伝いを終え、自分が睡眠をとっていたほんの数時間の間に何かが起こったということになる。

「真面目に答えて。」

考え事をしていたらリナリーの顔が険しくなっていた。

「いたって真面目です。大体なんの意見求められてんさ、俺は!」

リナリーはまた、視線をアレンとの2人に移した。
相変わらすアレンは黙々と食事に専念していて、はそれをにこにこと頬杖を付いて眺めている。

「ラビは、」

視線はずらさないままリナリーは口を開く。




「私好き?」




突拍子も無いことを聞かれた。

「・・・・・・・・・・・・・・それは一体どういう意味をお求めですかお嬢さん。」
「私はラビ好きよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・ありがとうございます。」

もう何も言わずに彼女に言わせておこうとラビは心に決めて、改めてリナリーの方へ向き直る。
リナリーは相変わらず2人を見つめていた。

「神田もリーバー班長も、皆好き。」

そう言う彼女の顔に笑顔はない。

リナリーは、自分の中の何かとの葛藤が起こるといつもこの台詞を吐く。
ラビにはそれが一体何の意味を成しているのかなんて皆目見当もつかなかったし、ましてやせめて、自分が力になってそれを解決してあげようなんて思うこともなかった。
それは多分、ラビよりもリナリーとの付き合いが長い神田ユウにしたって同じで、こうなったリナリーに、2人が何かしてあげるなんてことは今まで一度もなかった。リナリーだって2人にわけのわからないことをぶちまけることはするものの、助けを求めてきたこだって一度もない。

「神田。」

いつの間にかラビの後ろに相変わらずの不機嫌な顔で神田ユウが立っていた。
ラビは目でとりあえずあいさつをしておく。

のこともアレンくんのことも、知ってるわよね、少なくとも私と同じくらいは。」
「・・・・・・・・。」














「私は、なんて、嫌いよ。」














初めて人を嫌いと言ったリナリーに、ラビも神田も何も言えなかった。



 
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リナリー好きな人ごめんなさい。でも彼女はいい子ですよ。

07年04月15日


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