ぶはっ!とラビはリナリーの煎れたチャイティーを吹き出した。

汚い!と吹き出したラビに向かって側にあった雑巾を投げつけたのはアレンで、「おめーのせいだよ!」とラビが怒鳴る。
神田は既に離れたソファに非難済みで、その後をが追いかけた。一人悠々とティータイムを満喫しているのはリナリーで、ラビが隣で粗相をしても、最早眼中に入れることさえしていない。今日はおいしく煎れられた、と満足そうに頷いて、側にあるはちみつを少しばかりカップへと入れる。その真似をしようとアレンもはちみつに手を伸ばしたところで、やっとリナリーはラビに視線を向けた。

「なに?ラビはアレンくんがミスコンに出ることに不満でもあるの?」
「不満とかそういう問題じゃなくね?俺、ミスコンって女の子が出るものだと思っていました」
「可愛ければ問題ないと思う」

ラビの言葉にそう当たり前のように返したのは不機嫌な神田の隣で、呑気にDSに夢中になっているで、「ほら、生徒会長がそう言ってるんだし」とリナリーが続けた。

「っつかその場にユウもいたんだろ!?なんで止めなかったんだよ!」
「うるせえ」
「ユウの馬鹿!アレンは確かに目の保養にはあるかもしれないけど所詮は男の子なんですけど!」
「わあラビって男女差別するような心の狭い人だったんですね滅亡しました」
「幻滅じゃなくて滅亡!?何が!?」
「僕の中のラビに対するわずかにあった好感度です」

ざっくりとアレンは言うと、カップに残っていたチャイティーを一気に飲み干した。すかさずリナリーが二杯目を注ぐ。

「もーいいじゃん、どうせ決まったことなんだし、だったら楽しむべきだよ。だって考えてごらん、アレンの衣装とか決められるんだよ?あたしは絶対着物がいい!」

目を輝かせてそう振り返ったの言葉に神田がいつも通り舌打ちして、ラビがうんそうさねと適当に相槌を打った。



毎年ミスコンの衣装は本人の希望と、調査を行った際のリクエストを参考に決定する。だからもちろん、それを決める権利はアレン本人にあるのだけれど、もちろんは自分で決めるつもりだった。と、いうよりも生徒会役員総動員で「アレンをプロデュース。」というどこかで聞いたフレーズの企画が進行されている。面白そうだから、という生徒会長と文化祭実行委員長の独断で、アレンがミスコンに出場することは、関係者以外には知らされていない。



「だからむしろさーラビは感謝すべきだと思う」
「・・・何で」
「アレンをプロデュース。に参加できるからだよ!」

うんそうさね、とラビはまた呟いた。言っておきますけどやるからには僕優勝狙うんで中途半端な案はお断りですよとアレンが目を光らせる。神田はもう関わらないと心に誓ったようで、テレビ画面の空飛ぶあんぱんに集中していた。は手元のDSをぽちぽちと操作しながら、そういうわけで明日から昼休みはずっと生徒会室に篭りっきりになるからよろしくね、と言う。リナリーだけが1人残念そうに、私も手伝いたかったわ、と嘆き悲しんだ。彼女は今年もめでたく出場が決定しているため、自分のことで手が一杯なのである。

「そういえばリナリーって、どういう衣装にする予定なんですか?やっぱりチャイナ服?」

口いっぱいに胡麻団子を含みながらアレンが思い出したようにリナリーに問う。

「さあ、何かしら」
「自分で決めないんですか?」
「うん」
「じゃあ誰が?」

首をかしげたアレンにリナリーは綺麗な笑みを返しただけだった。





アレンはまだ、彼女の兄の存在を知らない。





「あー、そっか打倒リナリーということは打倒コムイなわけだ」

ぴたりとDSを操作する手を止め、は眉をしかめていつもよりも幾分か低い声を出した。ラビと神田もほとんど同時に表情を固まらせ、それから明後日の方角を見た。

「あいつ呼んでおけば大丈夫かな」
「あいつ?」
「そ、対コムイ専用人員、水谷くん」
「みずたにくん?というかそもそもコムイって誰です?」

ラビとは互いに顔を見合わせて、それから1人にこにこと事の成り行きを見守るリナリーに目を向け、「会えばわかるよ」と、どちらともなく呟いた。





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ただ単に吹き出すラビとそんなラビに雑巾投げつけるアレンさまを書きたかっただけ。

10年03月08日

水谷健一 designed by 陽さま


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文化祭編4