「最悪だ・・・・」
渋沢克朗は、目覚めて開口一番、そう言った。
「あ?何が?」
「ランニングしてから病院に行く予定だったのだが・・・・間に合わんな・・・・」
目覚まし時計の針によれば、現在の時刻は午前10時半。早寝早起きを心掛ける渋沢にとって、この時間に起きることはまずない。朝は遅くとも7時には起きて活動するのが日課である。それが、この体たらく。昨日そう言えば無理矢理缶チューハイを飲まされて、異様なまでにテンションの高い藤代と中西に付き合っていたら寝るのが遅くなってしまったのだということを思い出す。しかしよく寝た分、体は軽かった。
「まーいいじゃねえか、ほら」
ん、と三上に差し出されたマグカップからはカフェラテの良い香りが漂っている。未だ寝ぼけた頭でそれを受け取ると、ゆっくりと口づける。
「・・・・うまい」
「当たり前だろーが。誰かさんがうるさいせいでカフェラテだけならスタバよりうまい自身あるっつの」
三上が軽快に笑った。そういえば私服姿の三上を久しぶりに見たな、と渋沢は机に向かう彼を見てそう思った。制服とジャージならばそれこそ毎日のように見ているけれど、同じ部屋になって半年以上経つにも関わらず、私服姿はまだ一度くらいしかお目にかかっていない。背中に羽織られている皺ひとつないシャツを見て、ああ彼らしいな、と微笑んだ。
「何笑ってんだよ気持ち悪ィな」
「いや、私服姿を見たのは久しぶりだなと思って」
「それはお前が休日は大体朝早く出てっちまうからだろ、トレーニングだかなんだか知らねーけどご苦労なこって」
たまには俺の相手もしろよ?にやりと笑う三上に、それもそうだなと渋沢も笑った。
「サッカーするか」
「しねえよバカ!」