「おかえりなさいませご主人さま。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「私の名前はかぐや姫です。」











に帰れないかぐや姫











銀時は黙って目の前の少女を睨んでいた。否、少女じゃないかもしれない。普通の少女は自分で自分のことを「かぐや姫」とは言わない。
ちなみに銀時的かぐや姫とは、見目麗しく慎ましやかで、帰ってきたご主人を「お帰りなさいませご主人様」とか言って、玄関で三つ指ついて出迎えてくれるような人のことを言う。新八曰く「それはかぐや姫ではありません」らしいのだが、仕方がない。銀時はかぐや姫を読んだことがない。従って妄想の産物である。補足しておくとシンデレラや白雪姫もそんな感じだ。




さて、目の前の少女。

「おかえりなさいませご主人さま。」と言いながら出迎えてくれたところまではよしとしよう。問題はその迎え方である。
周りにはポテトチップスがちらばり、新八の家宝である寺門お通の曲を流し、銀時が朝買って、夜に読もうと大切に取っておいたジャンプを読みながら、「おかえりなさいませご主人さま。」だ。さらに言うなら自己紹介はいらない。

銀時は少女を殴ってみた。

「いいいいいいたいいたいた!!!何すんの!」
「何すんのはこっちの台詞!台詞と行動があきらかに違うんだけど!」
「どうしてよ男の人はこういうこと言われると喜ぶんでしょ!」
「お前なんか色々間違ってるから!」
「銀さん、まず知らない少女がここにいることにつっこんでください。」

新八の冷静なつっこみもむなしく響くだけ。
神楽が隣で誰これ銀ちゃんの愛人?とか言っていたが、新八はこれを軽くかつしっかりとスルーした。

「私の争奪戦がかつて行われたほどなのよ!それだけ私は貴重なの!」
「おーそうかじゃぁ欲しがってたやつんとこ行け。俺はいらないから。」
「何でも屋さんなんでしょ!ありがたく受け取りなさいよ!私にはもう帰る場所がないの!」
「捨てられたの?お前。」
「ちが・・・!迷子になっただけよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



かぐや姫でも迷子にはなるらしい。



とにかく、かぐや姫、もとい本名(新八が紳士的に優しく聞き出した)はどうやら迷子になってしまったようだ。住所を聞いてもわからないの一点張り。外にはあまり出たことがないと言うことから、おそらく良家のお嬢様であるのではないかと思う。
じゃぁ、何故彼女は外へ出たのかということなのだが、本人曰く、「王子さまに呼ばれた気がしたの」らしい。

王子に呼ばれて外に出てみたら王子はいなかった。

探してみた。

帰れなくなった。

そんな所に、たまたま顔をあげてみるといかにも胡散臭い感じの万屋銀ちゃんなんて文字が見えたもんですから、ちょっと厄介になろうかと思いまして。
勝手かつ失礼極まりないことをさらりと言ってのけた。新八は困ったように肩をすくめる。銀時は相変わらず無表情のままで何を考えているのかわからなかった。
いくら彼女の家がお金持ちであろうとも、この子の家探しをするのもなんだかただ損をして終わりそうな気がした。

「・・・・・・・・・あの子、どうします?どう見ても神楽ちゃんと同じくらいにしか見えませんからこのままほっぽりだすわけにも行かないでしょうし。」
「あー警察に届ければいいんじゃねぇの?あそこにも王子いんじゃん、サド王子。」

ジャンプをはらりと綺麗にめくる。とくに興味はないといった様子の銀時に新八はため息をついた。
ちらりとというかかぐや姫?に視線を送ると、それに気づいたらしい彼女はにっこりと微笑み返してきた。


あぐらかきながらそんな女神みたいに微笑まれても。


気持ち悪いくらいの変な顔で新八が彼女を睨んでいると、神楽が「新八、惚れたアルか?」と聞かれた。惚れてないからってかこの顔見てなんでそう思うの神楽ちゃん、というつっこみを入れるのもめんどうになって新八は再び神楽を無視した。仏の顔も3度までというから、あと一回はシカトしても大丈夫だろう、とわけのわからない屁理屈をこめて。

と、その時。

「・・・・・・新八。」

何か思いついたらしい銀時が、俺ってば頭いいじゃんとか言いながら、お菓子を取りに台所に行こうとした新八を袴の裾を引っ張る形で呼び止めた。
当然新八は思いっきり体制を崩すはめになる。ものすごく素晴らしい音がして床に顔からつっこんだ。
べちゃり。

「何すんですか!!!呼び止めるんだったらわざわざ袴掴むことないでしょ!」
「いやあったからつい。つかお前運動神経悪いのな。」
「うるせえよ!!」

そばにあったジャンプを蹴り飛ばす。
当然銀時はそれに対して怒りを覚えるわけで、当初の目的はどこへ行ったのやら、2人は乱闘体勢に突入した。

「ごめんネ。あの男どもはアホだから。」
「いえ、別にそれは構わないんですけど、あれ大丈夫なんですか?」
「ダイジョブダイジョブ。銀ちゃんは不死身だし新八は死なないし。」
「その微妙な表現の違いは何ですかっていうつっこみはしちゃだめなんですかね。」

















「あー・・・まずさっき俺が言おうと思ったことはだな。」

銀時の勝利ということでひと段落ついたらしい男2人は、満身創痍の状態で、机を一つ挟んでにらみ合っていた。
何ですかさっさと言ってくださいよこの若白髪、うるせぇよ眼鏡なきゃキャラ確立しないくせに、言いましたねあなたなんて全然ヒーローらしくないじゃないですか、お前はしっかり脇役っぽい感じだけどな。
早くも脱線し始めた模様。神楽は元々彼らの喧嘩の中に入る気はさらさらないらしく、愛犬定春と共にその隣で格闘を始めた。
狭い部屋に1人やることもなく取り残された感のあったはとにかく被害のおよばないように、できる限り部屋の隅まで移動した。

「っ!!あーもう!だからっ!!言いたいこと早く言ってくださいよあのわけわかんない女についてなんでしょ!」
「言おうとしてんのに喧嘩売ってきたのは君なんですけれども。」
「うるさいですよ。」

眼鏡が逆光で光って見えた。

「あーだからさっきも言った通りだけどあの子真撰組に連れていけばいいんじゃないのって。」

がしがしと頭を豪快にかきながら銀時は言う。

「・・・・・・・・・何言ってんですか警察なんて名前だけですよあの集団。ただの腐った大人の集まりじゃないですか。」
「いやいやあのサド王子らへんはまだまだおこちゃまだと思うのよ。」
「今は大人子供の話をしてるわけじゃありません。」
「うん。ってかもう大串くんに電話しちゃったし。」
「はぁ!?いつ!?」
「さっき新八とバトってた時に少々。」

さすが白夜叉、やることが常人とはレベルが違う。戦闘しながら新八に気づかれない形でいつのまにやら電話なんかをしていたらしい。

















「・・・・・・・・・・・・・・・先に言っておくが、うちは迷子を預かる所じゃねぇんだよ。」
「あら、じゃー何で来てくれたの。」
「おめーが総悟がここにいるっていったからだろうがアァアアァアアァァ!!!!」
「え?何あのサド王子本当に今いなかったわけ?わぁ俺すごい。」

真撰組副長土方十四郎。
万事屋主人の坂田銀時にまんまと騙されて素直に家にお呼ばれしてしまったようである。

「まぁ、なんでもいいんだけどね、とにかくこの子持っていって欲しいの。」

部屋の隅で相変わらず胡坐をかきながら顔だけは整った少女を指差して銀時は言った。
土方の眉間の皺がさらにまた増える。
来ている着物などから判断して、どう見ても良家のお嬢様だ。
正直迷子なんて放っておきたいことこの上ないのだが、この状況ではそうもいかない。
が家に帰った時に土方が取った行動を親なんかに言われてしまっては真撰組が危ういかもしれないのだ。これだから政府と繋がっているというのは面倒臭い。

「・・・・・・・・・・・・お前、家はどこなんだ?」

長いため息を一つ吐いて土方はやる気のなさそうな様子でタバコに火をつけた。
ここ禁煙、と銀時に咎められても聞く気はない。

「それが何聞いても知らないの一点張りなんですよ。家からあんまり出たことないみたいで。」

代わりに答えたのは新八という世話好き(本人は認めないかもしれないが)の少年だ。

「じゃぁなんで今日は出たんだよ。」
「王子に呼ばれたらしいです。」
「うちじゃなくて医者を呼べ。」

冷静なつっこみが飛んできた。

「ほんとですよ!ほんとに王子様に呼ばれた気がしたんです!さぁ、空を飛んでおいでって!」
「ほぅ、そりゃ間違いなく気のせいだな。」
「気のせいなんかじゃないですよ!だって今までそんな声聞いたことなかったもの!」

力説する少女の目は爛々と輝いており、まるで恋する乙女のようだ。
青春真っ只中の爽やか少年同様、夢見る乙女を止めるのは難しい。

「じゃぁ頑張れ万事屋。」
「えぇ!大串くんそれはないんじゃないの!警察のくせに迷子を放っておこうってか!?」
「迷子くらい届けてやれよ、お前ら万事屋だろ!」
「だってこの子明らかにおかしな迷子じゃん!?俺やだよ!」
「俺だって嫌だぁああぁああぁぁ!!!!」
















、お前ほんとに迷子アルか?」
「さぁ?どうでしょう?私はかぐや姫だから。」
















後日、とある財閥の大事な一人娘がいなくなったと世間(というかニュース)が大騒ぎし始めたというのはまた別のお話。


END
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はい!意味わかんない!
途中まで書いてあったので続き書こうと思って執筆し始めたのはいいものの、駄目でした。
終わり方がわからない!

07年05月03日

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