「夏休みと言えば!?」

教室に入るなり私は山本の机へ一直線。
獄寺とツナが驚いたように私を見る。教室にいる生徒たちはまだまばらで、いつもより少しだけ早めに来たんだということを実感した。山本ならばこの気持ちをわかってくれるだろうと思って思わず早めに家を出たのはいいものの、万年遅刻ギリギリ男が(でも遅刻はしない)いるかどうかと不安だったが、そんな心配は消えうせた。何で獄寺とツナまでいるんだと思ったが(だってこいつらは遅刻常習犯だ)まぁそこはつっこまないでおこう。

「え?」

山本は目をぱちくりとさせながらそう言う。

「だから!夏休みと言えば!?」
「10代目」

聞いた山本からの返事の代わりに横からやたらとトーンの低い声でそう聞こえた。
確認するまでもない。
獄寺だ。

「聞いてねぇよ大体あんたはいつだって10代目じゃない!」

10代目って何よ!そう言えば、10代目は10代目だ!とのこと。
獄寺と会話をしていると、天才と馬鹿は紙一重って本当なんだな、と改めて思う。

「ね、山本。夏休みと言えば?」

すとん、山本の前の席に腰を降ろしながら問う。
するとまた望んでもいない人物からの返答を得ることができた。

「やっぱりお祭りとかプールとかだよね」

ツナらしい。
普通にスルーをしようと思ったが、ここで獄寺に絡まれるのは正直遠慮しておきたい。単純馬鹿だからからかうことは楽しいと言えば楽しいのだが、今はそれよりも先にとにかく山本に意見を求めたかった。

「あー、うん、そうだね。で?」
「何だそのやる気のない返事はー!!!せっかく10代目がお返事をくださったっていうのに!」
「うっさい!まじお前ら黙れ!あたしは山本に質問してんの!」
「黙れ!?おま、話してるところに勝手に割り込んできたやつが言う台詞か!?」

確かに。

獄寺にしては珍しく的を射た意見に、私は感心してしまう。
さらに何かを続けようとした獄寺をツナが必死に引き止めている。「お、俺なら大丈夫だから!」大丈夫って何だろう、と思ったが口に出さずに喉の奥でとどめておいた。

「山本」

呼んでから視線を彼へと移す。
とにかくきっと、山本ならば、私と同じ答えを返してくれるはずだ。
昨日部活内でこの質問をしたら、誰1人として同じ答えを返してくれた人はいなかった。皆夏休みってものをわかっていない。

「そんなん決まってんだろ」

にやり、と彼は笑う。
これは、もしかして。





「甲子園、だろ?」





爽やかに、野球少年らしく笑う。

「そうっ!そうなんだよ!さすが山本!山本ならわかってくれると思ってた!大好き超愛してる!」

甲子園を見ないで何が夏休みだよなぁ?嬉しそうに笑う山本につられて私も思わず特大の笑顔を見せてしまった。
獄寺が呆れきった顔で、「野球馬鹿が2人・・・・」とかなんとか言っているのが耳に入ったがどうでもいい。
教室に部員が入ってきたらまず教えておいてやろう。

甲子園を見なければ、夏休みは始まらないんだよって。









   


END
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とうとう復活にまで手を出した私。色々と救いようがない。
夏休みが終わるころになって夏休み前のお話を書いてみる。

07年08月31日


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