ゆっくりと、瞼に落ちてきた唇に、も同じくらいゆっくりと目を閉じる。ヒーターで温められたはずの部屋の温度がやけに冷たく感じられるのは、きっと自分の体温がひどく上昇しているからなのだろうなと思った。ラケットの握りすぎで、少しだけ硬くなった彼の手のひらが、思っていたよりも温かくで、頬に添えられたそれに、はそっと、自分の左手を重ねていく。切りそろえられた前髪の上から、またキス。目を開けると少しだけ笑った彼が見えて、反射的に顔を背けた。目は閉じてて、そう言うかのように、再びまた、瞼に唇が落とされる。正座した膝の上で、ぎゅぅ、と右手をが硬く握り締めると、それを解くように、今度は彼が手を重ねた。するりと背中を撫でられて、は驚いたようにまた目を開けた。あまりにも優しいそれは、母親が泣く子を宥めているようで。じ、とが彼を見つめると、彼は不思議そうに首をかしげた。なに?そう言う彼に、は、何でもないよと首を振る。そうすると彼はくすりと笑って今度は西洋の王子様みたいに、既に解かれていたの、右手に口付けた。くすりとが笑うと、彼も笑う。その笑顔に吸い込まれていくように、そのまま彼に近づいて。彼の唇に、が自分の唇を重ねると、少しだけお互いが緊張したのがわかった。そのままゆっくりと後ろに押されて背中が壁に、とん、と接触。そうしたらもう何でもよくなってきて、は全てを投げ出したくなった。

なんでこの人はこんなに今は優しいんだろう。










 









END
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10000hit御礼企画より

お題配布元be in love with flower

08年08月04日再録


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