「総ちゃんには、内緒よ」

ミツバ姉が言った。
何を、なんてそんな愚問はさすがの私にもできなくて、彼女と一緒ににこりと笑った。



ねぇ、あなたはきっと知らないんでしょう?

女の子にとって、恋が一体どんなものなのか、恋する乙女がどれだけ強いのか。



あなたがどんなに私を冷たい言葉で突き放しても、それが私を思ってのことなのか、そうじゃないのかくらい、すぐに見抜くことができるのに。
あなたが土方さんを追いかける理由も、私にこれ以上近づいてこないわけも、ちゃんとわかってる。わかった上で、それでももう止められないのだから、これは仕方がないのだと思う。
ミツバ姉がいる限り、近藤さんがいる限り、私は絶対に総悟を振り向かせることはできないのだと思っていた。
それが一番私にとって楽な道だったからだ。
私が彼に思いを告げない限り、彼は私を見捨てたりは絶対にできないことがわかっていたから。



だけどもう、そんなことはしない。

進みだしたら前に行く以外に道はない。

ねぇ総悟。

私はあなたが、どこかで安堵していたこともわかっているよ。

私があなたに想いを告げなかったら、あなたはきっと私を置いて江戸に行くことに罪悪感があったでしょう?





だから私があなたに好きですと言った時に、一瞬だけ泣きそうな顔をしたんだ。





私は荷物をまとめてそれを持ち上げるとミツバ姉に敬礼した。
扉を開けて、前へ進む。かたりと扉が鳴る音がしたけれど、私はもう振り返らなかった。



待ってて総悟。











   



起こしてみせるから





END
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10000hit御礼企画より

お題配布元be in love with flower

08年08月04日再録


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