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白い仔供が立っている。 恐ろしいほど白い仔供だ。濃紺な闇の中、ただぼんやりと。静寂の中、ただひっそりと。 仔供は苛立っていた。何に、と聞かれても、おそらく答えることができない。人間になら誰にだってそれくらいあるのだということを仔供は知らなかった。だからさらに苛立った。苛々する自分が人に快く思われないことを知っているからだ。気をしずめようと深呼吸をしてみても意味はない。周りにあるのはただの闇。不安、が押し寄せてくる。さらに苛々、苛々苛々。 ふと視線が止まった。 白と赤。 赤をぼんやりと眺め、何かを呟いた。あぁ、仔供はそう言った。ゆっくりと歩きだす。前に見えるものは何もない。衣服の黒い部分は綺麗に闇に染まっていて、十字架がやたらと輝いていた。その十字架を握り潰すようにぐしゃりと掴んだ。左目をそっと押さえる。押さえてもその存在が消えるわけではない。わかっていたはずなのに仔供は驚いた、右目を見開いて。 ふいに思いついたようにポケットを探る。カチャン、と無機質な音が響いた。響いたというには語弊があるかもしれないが。 キラリ。 光る。ナイフ。 白が赤に染まる。 「ぁ、」 染まった右手を持ち上げて。染まっている左手でゆっくりとその赤をなぞり。 「ラビの、色。」 |